― べったら漬を、つくり直すということ ―
農林水産省HPには、
「べったら漬けとは、塩で下漬けした大根を
米麹と砂糖で漬けこんだ漬物。」と、定義されています。
しかし、私は農水省定義のべったら漬を
未だかつて拝見したことがありません。
一括表示上は定義を満たしているものの、
その内実を鵜呑みにはできないものはあります。
あとで、詳述しますが、形状・外観から大きく化学的な合理性を欠いているからです。
本当のべったら漬というものが、この世に存在していないとも言えることを示します。
であるならば、
私どもで農水省定義のべったら漬をお作りし、
お客さまにお届けすることができないかということから、
10年に渡る当店のべったら漬づくりが始まりました。
べったら漬と言えば、まず、甘味です。
一般のべったら漬の甘味には、
砂糖ではなく異性化糖(ぶどう糖果糖液糖など)が
しばしば使われます。
理由は、2点です。
低温では砂糖よりも甘味が強くなることと、
分子量が小さいため、
大根の形状を変化させることがなく、
甘味を内部まで浸透させることができる
(プリプリとした形状・外観・食感を維持できる)点です。
また、異性化糖は砂糖より価格が格段に安いことは、
経営的に大きな理由でありましょう。
加えて、還元水飴が使われることも多いようです
(還元水飴と「水飴」は、似て非なるものです)。
こちらも多用される要因としては、
異性化糖と同じくであるように推察します。
では、農林水産省定義のように
米麹と砂糖で漬けるとどうなるのか。
大根一本をまるごと漬けようとすると、
分子量の大きな砂糖(分子量342.2 g/mol)は
大根(分子量約18g/mol)の内部まで入ることが叶わず、
甘味を感じることができるのはごく表面のみとなります。
さらに、分子量の大きな砂糖が
無理に入ろうとするため、
大根は離水して、
絞られたようにその表面はデコボコします。
この自然原理は変えられないならば、
あらかじめひとくち大に「切らせていただいて漬け込もう」。
お客さまに包丁を持っていただくお手間を
お掛けすることもなく、簡単にお召し上がりいただけ、
安心・安全な昔ながらのべったら漬をお届けすることができる。
あれから、10年。
お客さまにお出しできると思えるまで、ほんとうに10年かかりました。
開封後、器にあけてお召し上がりください。
お気に召しますと幸いです。一度是非お試し下さいませ。
主人 敬白